2007年07月04日
ヒハツモドキ(ジャワナガコショウ)【八重山のコショウ】
赤いのが熟した実
波照間島の民家の壁に這っている
瓶入りのヒハツモドキ
八重山の民家の石垣でよく見かける「ピパチ」。八重山そばにかけると独特の風味で食欲をそそりますね。
お家の方が植えられているので、勝手に取らないようにしましょう。
原産地 東南アジア、マレーシア
科 コショウ科
日本での自生分布 琉球列島以南
漢字表記 畢撥擬
沖縄本島方言名 ヒハツ、ヒハチ、フィファチ、ピーヤシ、ピパーズ
沖縄への導入
観察スポット 民家の石垣
開花時期 夏
香り コショウに似た独特の香り。マツタケに似ている感じもする。
似ていて間違う木
インドナガコショウ。こちらがヒハツ(畢撥)で、中国にあるようです。雌花序が細長いので区別できるとのこと。
ヒハツモドキ=ジャワナガコショウの見方
通常の和名がヒハツモドキ、英名を訳した和名がジャワナガコショウです。つる性の常緑低木で、木の幹や岩の上を這い昇り、長さ2〜4mになります。沖縄では各地で栽培されています。果穂はつくしに似た円筒状で、下方から上方に向かって細くなり、長さ3cm、幅6〜7mmです。果実は球形で赤く熟し、径1.5mmぐらいです。学名(属名)の"Piper"は、「コショウ」のラテン語名です。
民家の石垣に這わせて、実がなっては摘まれて自家製コショウに使われています。朝方、島のおばあちゃんが摘む姿は、ちょっとした風物詩かも。
実は、コショウ(学名Piper nigrum)、ヒハツ(学名Piper longum L.)、ヒハツモドキ(学名Piper retrofractum)はそれぞれ別種で、少々ややこしい関係になっています。中国で取れるヒハツ(畢撥)=インドナガコショウはピパーと呼ばれ、それが英語のペッパーになりました。かつてアジアからギリシャ、ローマに輸出されていたコショウは、このインドナガコショウと丸い粒がぶどうの房のようになっているコショウの両方でした。コショウは遠くヨーロッパまで運ばれていたが、15世紀になりヨーロッパ人がコショウを求めてインドにやってきた時から、丸い粒のコショウの方が主流となり、そっちの方がペッパーと呼ばれるようになったのです。
なので、英語のペッパーはコショウですが、学名上ではインドナガコショウを指し、「ピパーズ」や「フィファチ」に音韻転訛した沖縄方言ではジャワナガコショウまで指すようになっています。
ちなみにコロンブスは「地球は丸いのだから、まっすぐ西に進めばインドに到達できるはずだ」とコショウを求め船出したが、着いたのはインドではなく新大陸で、コショウは得られなかったがトウガラシを持って帰ったといいます。
また、山地の自生種や園芸種で見られる「シマヤマヒハツ」はトウダイグサ科の別種で、香辛料にはならず果実酒などに使われています。
沖縄の暮らしとのつながり
石垣島などの土産で「ピパーチ」「ピーヤシ」などの名前で売られる、八重山産胡椒の瓶詰めでおなじみ。実を粉末にして、山羊料理や八重山そばにふりかけます。
沖縄本島や八重山では古くから栽培され、コショウの代用として用いられてきました。琉球料理には欠かせない香辛料で、特に山羊料理や豚料理と相性のよい調味料として重要です。薬用としても使われ、健胃整腸や食欲増進に用いられます。
通常はまだ青い未熟のまま収穫し、実を蒸して干し、粉にして香辛料として使用します。
中国では、ヒハツモドキの茎葉を生薬「山蒟(サンク)」と呼び、風邪や、リウマチによる痛み、腰や膝の機能不全、筋肉萎縮、咳による呼吸困難、打撲傷や毒蛇による咬傷を治すのに用いられているようです。
食材として
若葉も食すことができるといいます。ルッコラに似た形の若葉は、そのままか、細く刻んで天ぷらの衣をつけて揚げるとおいしいそう。柔らかな食感と独特の香りが広がります。
料理研究家によると、ピパーツは発汗作用があるため新陳代謝を促す働きもあり、暑い沖縄では夏バテ防止に最適な香辛料といえるとか。
栄養価
沖縄の歌での登場
高那節(八重山古典民謡歌詞集の解釈による)
【参考】ヒハツ(畢撥)=インドナガコショウ (コショウ科)
インド原産の常緑つる性植物です。ヨーロッパでは古く知られていて、「コショウには二つのタイプがあり、一つはblack pepper(現在私達が香辛料として利用しているコショウPiper nigrum)であり、もう一つはlong pepper(インドナガコショウ)である」とローマ時代の資料中に紹介されています。
果実にはコショウと同じ辛味成分ピペリン(piperine)を含み、インドではカレーなどの香辛料として利用されています。また、中国では鎮痛薬や止瀉薬として用います。
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│島野草